対立の哲学

対立こそ平和的である

2012-12-19から1日間の記事一覧

15.無関心

近代以降、人間は道徳的に大きく進化したという説がある。それは、人種や文化を越えて、別の地域や、地球の裏側にいる人達の非合理的な苦痛 にすら、許しがたいとする感情を持つようになったからだと言う。本当はそのような心情を持たない人も、それを公言す…

14.寛容の圧力

個人における対立は、多くの場合、感情的な対立へと発展する。それがいかに専門的な分野における高度な対立であっても、それをあくまで学問上のことと分離してとらえ、プライベートではあくまで親友だ、というような人格者は極めてまれなのだ。人格を売りに…

13.事例−4、対立と利害

人事部長であるA氏の態度に、課長のB氏は苛立っていた。人事部では、企業の競争力を高めるため、時代の流れにそって、年功序列賃金から成果主義的賃金への移行を命じられ、その企画を詰めていた。 基本的な考え方においても、具体的な道筋においても、意見…

12.事例−3、アイデンティティ

些細な出来事だった。A氏は30代の善良な会社員。上司のB部長とも関係は良好だった。しかし、その関係はある一言から激変した。B部長はA氏の机の上に飾られたガンダムのフィギュアを見ながら言った。「いい年して、こんなもの置くなよ」B部長には何の悪…

11.事例−2、対立未満

会社に就職して10年以上が過ぎた。30を過ぎたが、仕事に情熱を傾けるわけでもなく、特に趣味があるわけでもない。結婚もしていないし、交際している女性もいない。両親とは疎遠であり、学生時代から一人暮らしを続けている。それに不満があるわけではな…

10.事例ー1、いじめ

「とくに理由なんて無いですよ。何となく気にいらないってとこかな。」いじめをしたA君は教師にそう言った。 理由はない。もちろん、理由を分析することはできる。想像することもできる。いじめを受けたB君は、A君に何もしていない。 B君は言った。「A…

9.対立の射程

民主主義とは最終的には数の論理だ。より大きな合意を得るためには各論など語らない方が良いことは明白だろう。究極の目標である平和や自由や愛や平等という幻想を与えることで、より多くの共感を獲得し連帯を誇示する。改革や国家が キーワードになる場合も…

8.善悪論

処世が善か悪かを問うことに意味は無い。それは、善悪の問題ではなく必要なのだ。そのような設問は、その基準からして誤っている。 人間は社会性の動物なのだから、社会に適応しなくては生きて行けない。さて、少しだけ哲学的になろう。 善悪とは何だろうか…

7.権力

権力とは何かという問いに対する答えは一つではない。スティーヴン・ルークスによれば、「Aという主体がBに何かをさせる一次元的な権力。 さらに、Aが複数化する二次元的な権力。そして、AがBを洗脳し、もはやBからはAの存在が認識できなくなる三次元…

6.公と私

ある人はこう嘆く。あまりにも個人の自由が優先されてしまった結果、社会の秩序が崩れてしまったと。そして、公の規範を強く打ち出すことを主張する。もちろん、この場合の秩序というのは権力と権威の単純明快なヒエラルキーのことだろう。しかし、本当に個…

5.時代

私たちの生きている現代とはどういう時代なのか。疲弊した近代。テロの世紀。帝国の時代。知識情報社会。管理社会。インターネットの時代な どなど。見る方向はいくらでもあるし、それについての認識や評価も多様である。物理的には同じ時代を生きていても、…

4.道徳

人間は、種の本能に基づく世界観と、言語で構成される文化的世界観という二つの世界を抱えている。丸山圭三郎はこれを「身分け構造」「言分け構造」と呼んだ。この二つの世界は決して統合されることがない。いつも引き裂かれ、傷つき、痛み、悩みながら生き…

3.格差

格差の拡大が社会問題として取り上げることが多くなった。各種の経済統計もそれを裏付けており、それを政府の責任として非難する人たちもいる。政府の政策に不満を持つ人たちがいる。それらの人たちの非難の鉾先は、政府や閣僚にとどまらない。市場原理主義…

2.内と外

組織とか共同体と呼ばれるものは、必ずそこに、内と外を分ける壁を作る。作ることを強く意識する場合もあるし、あまり意識することなく自然に壁が出来る場合もある。家族、学校、会社、趣味のサークル、市町村、国、地域社会、日本社会、国際社会。性格や規…

1.怒り

楽しみにしていた遠足が雨で中止になったからといって天候に怒る人はいない。いるかもしれないが、それは圧倒的に少数だ。一体何に対して怒ればいいのか。自然か、地球か、神か、物理法則、あるいは日本海に張り出した高気圧に対して怒りをぶつけるのか。そ…

序文

序文(対立の哲学) 「和」を強要するよりも、「対立」を許容する方が、はるかに理性的であり、はるかに健全である。合意などあり得ない。合意はゴールではない。誤った目標が最悪の対立を生んでしまう。ならば、より合理的な対立を模索するべきだ。より良い…